■ポリオワクチンについての当クリニックの見解(平成24年1月)
ポリオ(小児麻痺)はポリオウイルスにより神経が侵されて、手足の筋肉が麻痺(弛緩性麻痺)する病気です。その麻痺は生涯にわたり続くことが多いとされ、一旦発症したポリオに対しては、残念ながら有効な治療法がありません。ポリオ(小児麻痺)は我が国では1981年以降、つまり30年以上、自然感染での発生がありません。しかし、その一方で定期接種であるポリオ生ワクチンにより、数十万~百万人に1人の割合でポリオに感染し、手足に麻痺が残る副反応が報告されています。ワクチンさえ受けなければポリオにならない、というとても皮肉な悲しい状況を生み出しているのです。
現在、ポリオを予防するワクチンは、口から飲む生ワクチン(定期接種)と、注射で行う不活化ワクチンの2種類がありますが、ポリオ発症の副反応がない不活化ワクチンは国内未承認です。したがって、一部の心ある小児科医を中心に現在行われている不活化ワクチンの接種で、万一重大な副反応が生じてしまった場合は、公的補償が一切効かないという厳しい現状になっています。ところが日本以外の先進国は、10年以上も前に生ワクチンを止め、不活化ワクチン(ポリオの発症、ワクチン関連麻痺、周囲の人への二次感染なし)に切り替えています。いつの間にか、生ワクチンにこだわった日本だけが、世界から遅れてしまったのです。
これに昨年、風穴を開けたのが神奈川県でした。ご存知の方も多いと思いますが、独自の基準でポリオ不活化ワクチン(フランス製)の接種を開始しました。この背景には、神奈川県でポリオの定期接種を拒否する人が年々増え続けていたという現実があり、このまま接種拒否者が増え続けると、いずれ日本でもポリオの集団発生が起きかねないという危機感が生じたからです。
そして、ようやく政府も全国の厳しい声に押され、この秋以降での不活化ワクチンの導入を決めたようです。現在の情報では、四種混合(三種混合+ポリオ不活化ワクチン)と単独の不活化ポリオワクチンが同時に発売される模様です。ただ、いつまでも待つわけにはいきませんので、どの時期に導入されるのか?政府の動きを注意深く見守って、何とか出来るだけ早く安定した不活化ポリオワクチンの接種にこぎつけなければならないと考えています。
不活化ポリオワクチン開始
平成24年9月1日より、全国一斉に不活化ポリオワクチンが開始されました。
定期接種に仲間入りです。
副反応でポリオ(小児麻痺)に罹る心配のない、この不活化ワクチンが始まったことは、
子どもを持つ親として、医師として非常に嬉しい限りです。
それでは、不活化ポリオワクチンの受け方について簡単に説明します。
1)時期と回数・・・生後3カ月より3~4週の間隔で3度、3度目より約1年後に追加接種を1度、
計4回受けます。
2)接種方法・・他のワクチン同様に皮下注射です。
3)これまでのポリオ生ワクチンとの関係
a)生ワクチンを2度受けている場合、不活化ワクチンを受ける必要はありません(不活化 0回)。
b)生ワクチンを1度受けている場合、不活化ワクチンを2度受けて、1年後に追加接種(不活化 計3回)を受けます。
c)生ワクチンをこれまで1度も受けていない場合は、
不活化ワクチンを3度受けて、1年後に追加接種(不活化 計4回)。
4)これまでどこかの病院で、輸入した不活化ワクチンを受けた場合
a)輸入不活化を1度受けている場合は、不活化を2度受けて、1年後に追加接種。
b)輸入不活化を2度受けている場合は、不活化を1度受けて、1年後に追加接種。
c)輸入不活化を3度受けている場合は、1年後の追加接種のみ受ける。
5)同時接種について
他の不活化ワクチンと同時接種を行います。
ただ、当院では“赤ちゃんの受ける痛み”に配慮して、同時接種は原則2種類までとさせて頂いております。
尚、この冬に4種混合ワクチン(三種混合ワクチン+不活化ポリオワクチン)が発売される予定です。
(平成24年9月1日 記)