■ブルガダ症候群
心臓突然死の70~80%は心室細動が原因と考えられています。心室細動とは心室が細かく震え規則的な拍動を失うことで血液を全身に送ることが出来なくなり、意識障害(失神)やけいれんを引き起こす病態です。その中で心臓に明らかな器質的基礎疾患がない場合を、特発性の心室細動と呼びます。この特発性の心室細動の原因として注目されているのがブルガダ症候群です。1992年にスペインのブルガダ兄弟により、突然死を起こした患者に、ある共通の心電図波形が多く見られることが報告されました。この所見は日本を含む東南アジアの30~40歳代の男性に多く(男性が90%)、心筋(心臓の筋肉)の活動を制限するタンパク質の先天的遺伝子異常が原因の一つと考えられています。このような心電図波形は常時出ているとは限らず、ある年齢で突然現れたり、日によって出たり出なかったりするので注意を要します。ブルガダ症候群による心室細動は、一過性で自然に回復することもありますが、時に致死的となります。深夜から早朝に心室細動が起きやすいのも特徴の一つです。
さて、ブルガダ心電図が直ちに危険というわけではありません。下記について検討する必要があります。
1) 失神やけいれんなどの症状なし。健診などの心電図で偶然、指摘された場合。
家族歴(血のつながった方)に突然死がない場合は、心室細動を生じるリスクは非常に低いと言えます。従って、過度に不安になる必要はありません。
2) 失神・けいれんなどの症状あり。
症状が神経調節性失神や起立性低血圧など他の病気が原因となっている場合があります。ブルガダ症候群に起因しているものか否かを速やかに検査し、治療を行います。
3) 心室細動発作がすでに確認されている場合。
植込み型除細動器の治療が必要となります。一度心室細動の発作を起こすと一年以内に再発作を生じる可能性が高まり、時に致死的となるため治療が急がれます。この除細動器とは心室細動出現時に電気ショックをかけて不整脈を通常のリズムに戻すというものです。
その他、抗うつ薬や抗不整脈剤のなかにブルガダ心電図を悪化させるものがあります。内服薬についても注意が必要です。
検査:心電図・運動負荷心電図・心エコー、さらに必要に応じて24時間ホルタ―心電図を行います。検査で異常が認められた場合、入院して薬剤負荷などの精密検査を行います。いずれにしても、ブルガダ心電図の指摘があった場合は、循環器専門機関を受診しましょう。